初回面談レポート:安野太郎

メディア芸術クリエイター育成支援事業の第1回目の面談が7月17日(木)に実施されました。今年度採択された7組のクリエイターと担当アドバイザーとのやりとりの様子をレポートしてお伝えしていきます。

 

第2回目は安野太郎さん。

 

安野さんは第12回に『サーチエンジン』で、第17回に『ゾンビ音楽』で文化庁メディア芸術祭アート部門の審査委員会推薦作品に選出されました。今回採択されたのは、第17回の審査委員会推薦作品『ゾンビ音楽』とロボット掃除機を合体させ、『動くゾンビ音楽を実現させる』という企画です。「人間VSゾンビ」という世界観で音楽を奏でるロボット掃除機。実現が楽しみです。

安野さんのアドバイザーを担当するのは、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授/日本デジタルゲーム学会理事研究委員長の遠藤雅伸氏と、アートディレクター/映像ディレクターの田中秀幸氏です。

 

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作品タイトルについて

 

安野太郎(以下安野) 企画を応募した時点ではタイトルを『Marching of the Dead』としていましたが、『When The Zombies Go Marching In』 に変更しました。黒人霊歌に「聖者の行進(When The Saints Go Marching In)」という曲がありますが、これは黒人の埋葬の際に演奏された曲で、埋葬が終わるとこの曲でパレードをして帰って行ったそうです。そこで、黒人と奴隷、埋葬とゾンビというアナロジーから、このタイトルに変更しました。

― 作品のタイトルにアナロジーを盛り込むことにした安野さん。次に課題として抱えている展示方法について話が移って行きます。

 

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安野さんの描いたスケッチ

 

展示方法の模索

 

安野 技術的な面での課題もあるが、この企画で一番固まっていないのは、作品の展示方法についてです。

田中秀幸(以下田中) 企画書を見て、技術的な問題ではなく展示方法だけがひっかかっていました。作品を展示する際には、具体的なビジュアルを展示に持ち込まない方がいいのでは。マシンとマシンが奏でる音だけで展示をした方が、鑑賞者のイメージも広がるだろうし、ビジュアル的要素をいれると作品に対するイメージが狭まってしまう気がするので。

遠藤雅伸(以下遠藤) ロボットという点で言うと、日本人にとってロボットは「機械と人間の戦い」として捉えられるのではなく、むしろ「ペット」的な感覚でとらえられる側面もあるでしょうね。まるでペットショップでたくさん寝そべっている猫をかわいらしげに見るような感覚で。

田中 タイトルでイメージをコントロールすることもできるでしょうね。具体的なイメージだけで作品を作っている人は多いが、それではもったいない。例えばシンプルな空間に床の色だけを塗り分けて、その床から外には出ないような展示なども考えられますね。

遠藤 鑑賞体験するうちに鑑賞者の中にイメージが生まれるから、余計なイメージを省いてシンプルな展示にするのであれば、バーチャルウォールを利用するという方法もある。

― こうした担当アドバイザーからの意見によって、安野さんも鑑賞者に先入観的なイメージを与えないような展示方法の検討を進めるとのことです。そして話は作品の技術的な課題へ。

 

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電力補給と指運アルゴリズム

 

安野 これまでのゾンビ音楽は、PCにUSB接続されたArduinoに機械がケーブルで接続されている、いわゆるワイヤードでしたが、今回の作品ではワイヤレスでゾンビ音楽を実現させます。充電が切れそうになると電力を補給するよう設計された掃除機との合体によって、長時間による演奏を可能にしようと考えいています。

― 電力補給や演奏方法についていくつか課題があるようです。

 

安野 現在ロボット掃除機に関するリサーチを行なっていて、メーカーが研究用に販売している研究開発キットがあるので、これを利用することを考えています。シリアルポートから電源はとれるようだが、その電圧がどれくらいかリサーチしているところ。また、縦笛はロボット掃除機の空気圧で音を奏でるが、笛の指穴を押さえるためにソレノイドを使用する予定です。

遠藤 今回の企画の実現にあたってこの研究開発キットはとても利用価値があると思う。ソレノイドは電力を消費するため、もう少し省電力の仕組みを検討してみるのもいいと思います。ラジコン等に入っているカムがいいかもしれない。あるいはサーボモーターとか、ステッピングモーターとか、マイクロモーターなどもあるので、検討してみてはどうでしょう。

田中 奏でられる音については、リズムとかテンポをシンクロさせることも考えていますか?

安野 パソコンから指令を出して、みたいなことは出来ると思う。複数台のロボット掃除機それぞれが動き出すと不思議とハーモニーが出てしまうような仕組みを考えています。

田中 それは偶然性を狙うのか、それともコントロールして?

安野 分散型にしたいですね。そうなると、完全な西洋音楽のようなものにはならないだろうと思います。これまでは恣意的に音楽を考えてやっていたが、偶然であっても、巡回コードなどで音楽的にもいいところまで行けそうなんですけどね。空気圧によって音量も変わりますし、音程もある程度変わります。重音って言うんですけど、指使いによっては和音が鳴ることもある。

 

― 次回の面談は9月を予定していますが、それまでに研究開発キットを購入してプロトタイプを作り、今回話し合った課題を検討することと、展示スペースについて具体的に検討を進めることが課題となりました。

 

 

次回は吉野耕平さんの初回面談の様子をお届けします。

 

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