最終面談レポート:三原聡一郎

12月2日(火)に実施された最終面談のやりとりの様子をレポートしてお伝えします。

 
 
第5回目は三原聡一郎さん。
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三原さんの採択された企画『空白のプロジェクト#3 虹をかける糞土』は、交換不可能な価値の探求を目的とした微生物燃料電池の発電エネルギーによる小さな虹の発生を試みるアートプロジェクトです。三原さんのアドバイザーを担当するのは、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授、日本デジタルゲーム学会理事研究委員長の遠藤雅伸氏と、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員の畠中実氏です。
 
 

エネルギーを生む土壌の探求

 

― オーストラリアから帰国後、日本各地で砂の採取を行い、発電に適したもの/適していないものを精査していたという三原さん。今回の面談は、日本各地で採取した土壌の話からスタートしました。
 
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三原さんが採取した砂

 

三原聡一郎(以下三原) 日本の土壌で興味深かったことは、漆黒の粒子が含まれている砂に太平洋側で出合ったことです。福島県に行った際、相馬市の砂浜の砂がキラキラ光っていることに気づいたのですが、それは「砂鉄」で、かつて相馬藩の頃から製鉄が産業として行われていたと、現地の方に聞きました。作品に使っている菌は「鉄還元菌」という菌なので、これはもしかしたら黒い砂には菌の含有率が多いのではないか?と思ったんです。エネルギーの問題を扱うことにおいて、福島県の砂をイデオロギーとしてではなく、あくまでバイオロジカルな必然性として使うことは作品にとって有効だと思い、電流生成の実験を行ってみたのですが、残念ながら結果は思わしくはなかったです。ただ、いままで採取した中では、同じように黒い粒子を含む静岡県浜松市の砂からが一番いい結果が出ています。今日の面談の帰りにも浜松に立ち寄り、再度、採取制作し電流生成値をチェックして、アベレージが高ければ改めて砂を採取しにいこうと思っています。

遠藤雅伸(以下遠藤) 土壌のリサーチはとてもおもしろいですね。例えば鉄鉱石をグラインダーで粉砕して土に混ぜて、作品のための土を作るのはどうでしょう。

三原 それは可能だと思いますが、含有する微生物、そしてその他の有機物に依存する部分が大きいと思うので、金属元素の配分だけではない部分がある気がしています。いま、ひとつだけ実践していることがあります。鉄還元菌は鉄を好むので、電池のセル(容器)の底部の電極(陽極)周辺に「使い捨てカイロ」の中身である鉄粉を混ぜています。電極は多孔質で導電率が高い素材のカーボンファイバを使っています。更にこれを同じく多孔質で疎水性がある「ティーバッグ」で包んでいます。何故ティーバッグかというと電極にコロニー(菌の群衆)を固着させる為に内蔵で包めとオーストラリアで研究者に言われ、その代用物として色々と試した結果です。

遠藤 おもしろいですね。いろいろ科学者も研究しているでしょうから、そう簡単なことではないんでしょうね。

三原 今後、発電に最適な方法が見つかり、思わぬ方向から世の中が変わったら面白いなと感じています。自分も考えうる限りのアイデアを非専門家の視点で試しています。
 
 
― 制作中の微生物燃料電池には、定期的に「栄養」を与えているそうです。その栄養を与える様子も実演されました。
 
 
三原 土壌に水分がかなり含まれているので、自然と成分が循環するんです。最終的に微生物が取り入れる栄養素に一番近くて手に入りやすいものは、スーパーでも売っている「食用酢」で、それをエサとして使っています。微生物のコロニーをセル(容器)の底部の電極周辺に貯めないといけないので、まず底部に栄養を与えて、自然に栄養が行き渡るようにします。栄養を与えていれば半永久的に電気が生み出されます。

 
 

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虹を生み出す機構

 

― さらにこの日は乾電池とレンズを用いて、実際に虹の発生も実演されました。
 
三原 この作品で虹は「太陽のメタファー」です。人工の光源で太陽光に近いスペクトル成分が含まれているものを調べたところ、キセノン放電管で、その中でも最も省電力なのが「使い捨てカメラ」のストロボだったんです。使い捨てカメラを分解して光源を作ってみました。パチッパチッと点滅の周期が、電圧値と電流値によって変化していきます。点滅のリズムは微生物燃料電池の発電量の増減によって変わったらおもしろいと思って、試しているところです。
 
畠中実(以下畠中) この光源は、どうしてもストロボライトのように点滅する見え方になってしまうのですか?

三原 そのほうが効率がいいのと、使い捨てカメラの仕様だと、常時点灯しておくとライト自体が溶けてしまうんです。ただ、光り方は試行錯誤しています。

一同 虹が見えますね。

三原 もう少し暗い空間だと、完全に虹の七色が見えるんです。あとは、レンズを揺らすことができたら、スクリーン上で「映像」になるんじゃないかなと考えています。光の七色が保たれつつ、レンズのフォーカスがずれたりずれなかったり。微生物燃料電池自体が生きていてエネルギーを生み出しているというイメージでレンズの機構を含めて作ろうと思っています。

遠藤 いい感じに進んでいますね。やはり実際に発電できているというのが素晴らしいですね。

畠中 展示するときの空間は真っ暗になりますか?

三原 真っ暗にするか、ある程度の遮光をするかは考えていますが、作品が見える場所はオープンなほうがいいと思っています。

畠中 先ほど、レンズを動かすという話もありましたが、作品の系統に属するもので電力が必要なものは、すべて微生物燃料電池で動かさないといけないような気がします。動かすために施設の電気を使うのはつじつまが合わないと思うので、自然に揺れるほうがいいと思いますね。例えば、人が虹に近づくと床が揺れて、その振動で振り子のように揺れるとか。光が映像になるのはとてもいいですね。

遠藤 人が歩く際の振動って意外とありますからね。

畠中 あと、この虹の光を印画紙で撮影できるといいですね。そうするともうひとつ作品ができます。

三原 はい、アナログなフィルムで。すごくおもしろそうですよね。
 

 
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プロセスの重要性

 

畠中 この作品は、展示している間にも変化があるわけですよね。観客が作品と出会ったときだけではなくて、それまでのプロセスも見せられるといいですよね。

三原 そうですね。アーティスティックな方法で記録をとりたいです。それは生成のエネルギーの記録になるのでおもしろそうですよね。

畠中 あとは、最終的にインスタレーションになったときにどうなるかが知りたいですね。その前には成果プレゼンテーションもあるわけですが。

三原 いま考えているのは、1月から京都芸術センターのスタジオを使用して、ドキュメント映像を撮影しようと思っています。成果プレゼンテーションではセルが大量で搬入できないので、そのドキュメント映像の上映と、微生物燃料電池をいくつか持ってきてプレゼンしようと思っています。

 
 
― 作品制作が順調に進んでいる三原さん。成果プレゼンテーションではどのような“光”を見ることができるのでしょうか。
 
 
 
次回は安野太郎さんの最終面談の様子をお届けします。

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