「クリエイターが知っておきたい法律知識と制作支援の活用法」第二部レポート

文化庁メディア芸術祭において受賞作品や審査委員会推薦作品に選ばれた若手クリエイターの創作活動をサポートするメディア芸術クリエイター育成支援事業では、平成27年度の企画募集の締切が迫った2015年5月24日 に、アーツ千代田 3331にて、事業の紹介とクリエイターにとって必要なスキル向上のためのレクチャー「クリエイターが知っておきたい法律知識と制作支援の活用法」が開催されました。
 
二部制で行われたこの日のレクチャー。第一部「クリエイターが知らないといけない法律の基本のルール」では弁護士・水野祐氏(シティライツ法律事務所代表)が、第二部「メディア芸術クリエイター育成支援事業で支援を受けて」では、過去に「メディア芸術クリエイター育成支援事業」の支援を受けたクリエイターの中から、小松宏誠氏と水江未来氏が登壇し、支援を受けて作品を作ってみて感じたこと、現在の作家としての取り組みなどを話していただきました。今回は第二部の模様をレポートします。

 
 
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第二部に登壇いただいた小松宏誠さん(左)と水江未来さん(右)

 
 

ひとつの作品をきっかけに次の作品が生まれる

 

― 平成25年度に本事業で、『Lifelog_glider』の企画が採択され、制作した小松宏誠さん。自己紹介と作品紹介を兼ねて、大学卒業後から現在に至るまでどのように作家活動をしてきたか。そして、本事業を通して学んだことについて話していただきました。
 
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小松宏誠 僕は、“浮遊”というものへの興味から作品制作をはじめました。それで辿りついたのが“羽根”です。はじめは、何気なく使った素材だったのですが、そこから羽根というものを軸として活動を続けています。
 
僕はラッキーなことに、大学院時代にいい仲間と出会いました。その仲間達とともにクライアントワークを中心に行うグループ「アトリエオモヤ」をつくり、ともに活動していました。「アトリエオモヤ」では7年ほど活動して、そろそろ独立して自分のストーリーを作りたいと思っていた時に、この事業のことを知りました。
 
普通は自身の作品を作るのにお金を出してもらえないんです。でもこの事業は、作りたいものがあればある一定のお金が予算としてつく。それで作りたいものものを作りなよというプログラムだったので、これをきっかけに自分のキャリアをスタートさせようと思ったんです。
 
この事業では、基本的に作った作品の展示場所は自分自身で探さないといけないのですが、たまたま『MEDIA AMBITION TOKYO 2014』というイベントに声をかけていただいて、南青山のINTERSECT BY LEXUS – TOKYOで展示させてもらいました。そこで展示をしたら、今度は『Lexus Inspired By Design』のCMに使いたいという話いただきました。自分が作った作品をかっこよく使ってくれたのでとても幸せでしたね。
 

1:28頃より小松さんの『Lifelog_glider』が登場します

 
当初、展示場所として考えていたのは銀座のISSEY MIYAKEでした。事業の成果作品をここで展示させてもらえないかと、初めて自分の作品を売り込みをしたんです。そうしたら、デザイナーの責任者の方と直接お話までさせていただけて。結局、その時は展示はできなかったんですが、何か面白いことをやろうかと言ってくださって、別の機会で新たな仕事が生まれるという経験をしました。
 
その後、六本木ヒルズで『Snowy Air Chandelier』を制作・展示する機会をいただいたりと、独立1年目は、この事業をきっかけにとても良い流れができました。
 
 

作品内容や制作体制の新たなチャレンジとして

 
― 小松さんと同じく平成25年度に企画が採択され、藤田純平さんとともにアニメーション作品『ももんくん』を制作している水江未来さん。現在も完成に向けて制作を続けている作品の紹介と、事業での支援を受けて思ったことや、理想的な支援のあり方についても話していただきました。
 
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水江未来 『ももんくん』は、一枚絵が変容していくアニメーションです。アニメーションは、基本的に画面全体がずっと動き続けることはないのですが、全ピクセルが常に動く状態のアニメーションを作りたいと考えました。
 
この作品では、自分のトレードマークである抽象アニメーションではないもの、自身のキャリアの中でやってこなかったことに挑戦することを考えて応募をしました。また、この作品は僕ひとりで作っているのではなくて、同じくアニメーション作家である藤田純平と一緒に作品を作るという共同制作へのチャレンジでもありましたので、そういう姿勢が評価されたと思っています。
 
僕はアニメーションを作り始めて10年以上ずっと抽象的な作品を作ってきたのですが、それだけ続けていると自分の評価が固まってきてしまうんです。海外の映画祭で発表しても刺激がなくなってくる。そこで全く評価されていないジャンルで作品を作ることをやってみたくて応募したわけです。
 
この作品は、来年にデジタルコンテンツとしてリリースしようとしています。ほかにも、僕と藤田と音楽家の3人で作品を作ったり、短編アニメの祭典『TOKYO ANIMA!』というイベントの企画運営をやったりしているのですが、その流れで、自分たちのマンガとアニメーションと音楽をパッケージしたものを作りたいと考えました。作品を作ることだけではなく、その発表方法も考えています。
 
 
この事業は新しいチャレンジに対して支援してくれるのが特徴で、「無謀かもしれないけれど今までやれなかったことに対して挑戦しよう」という時に本当に良いプログラムだと思います。あと、細かいところですが毎月かかった経費の精算ができる。立て替え負担が少ないのは、個人制作としては大変助かりました。
 
難しかったところは、定期的にアドバイザーとの面談で成果を報告することでした(笑)。受けたアドバイスが次回面談までの宿題になってしまい、「本当はこっちをやりたかったんだけど宿題を先にやらないといけないから……」という難しさはありました(笑)。
支援期間は実質は半年くらいで、短い期間でスピーディーに作っていきます。アニメーションは、作るのにとても時間がかかるものなので、チームでやることをコントロールするのが大変でした。予算をどう使って、スタッフにどの作業を用意するかという判断をしていくというのは、なかなか大変でしたが、鍛えられました。この経験はなかなか面白かったと思います。
 
どこにお金を使ったかというと、アシスタントの人件費です。僕は紙に描いてるんですけど、フリーランスのアニメーターに入ってもらったり、膨大にある紙をスキャンする作業に人手が必要で、アニメーションってチームでやるとお金がかかるということがよくわかりました。
一人で作っているとお金をかけない作り方もできるんですけど、限界がある。どこかで予算をかけて作って行くことに切り替えないといけないと思うので、それを試していくことができたのは良かったと思います。この作品を制作した翌年に、『GLAY EXPO』の映像を作ったのですが、本事業でのスタッフワークのノウハウを活かすことができました。
 
インディペンデントなアニメーションと商業的なアニメーションとは作り方はまったく違くてその中間はない。大手のスタジオが短編アニメを作ってもいいし、個人がスタッフワークで長編を作ってもいいわけで、もっといろいろなアニメーションの作られ方が必要だと思っています。その助けとして、支援にバリエーションが出てくることは、アーティストの背中を押してもらう為に必要だと思います。
 
 
― 本年度(平成27年度)の本事業の採択クリエイターは、6月下旬に本ウェブサイトにて発表いたします。
 

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