初回面談レポート:姫田真武

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。7月6日(月)と7月15日(水)の2日間でその面談の第1回目が実施されました。作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。
今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をこれからレポートして皆さんにお伝えしていきます。

 

第3回目は姫田真武さんです。

 

第15回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で『ようこそぼくです』が審査委員会推薦作品に、第17回のアニメーション部門では『ようこそぼくです選』が新人賞に選出された姫田真武さん。今回採択されたのは、歌とアニメーションのシリーズ作品『ようこそぼくです』の4作目となる『ようこそぼくです4』です。『ようこそぼくです4』は、『レッツコリツ』『ようこ、素朴です』『こそこそぼくです』の3曲を収録予定。

アドバイザーを担当するのは、アニメーション作家の野村辰寿氏とNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員の畠中実氏です。

 

今回挑戦する新作について

 

― はじめに、絵コンテを見せながら新作『ようこそぼくです4』を説明してくださいました。
 
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姫田真武(以下、姫田) 今回の『ようこそぼくです4』は、自作自演の歌とアニメーションによるシリーズ作品の4作目です。

オープニングのパフォーマンスの後に1曲目の『レッツコリツ』という歌を入れます。アニメーションを作る作業はひたすら孤独と戦うものなので、自分で自分を応援するかぞえ歌になっています。

その後、2分くらいの寸劇を入れて、2曲目の『ようこ、素朴です』という歌に入ります。これは『ようこそぼくです』シリーズが3まであることを前提としてある曲なので、それを説明しないと解りづらいかもしれません。ようこさんというキャラクターが「『ようこそぼくです』シリーズは今まで3つも作っているのに、どうして私は一度も出してくれないの? 私の作品を作っているんだから出しなさいよ!」と僕に訴えかける歌です。昭和の歌謡ショーみたいに女の人が歌うイメージで、言葉をコンテンポラリーダンスみたいな動きで表してみたいです。この歌によって感化された僕が「『ようこそぼくです』って『ようこ、素朴です』だったんだ! ようこさんの為に作ってたんだ」ということに気づきます。

最後に、ちょっとバカっぽい感じで3曲目の『こそこそぼくです』に入ります。結局のところは『ようこそぼくです』には意味はなくて、ただ僕の自作自演の歌ですよということに最後に気づくという流れです。

 

これまでの作品との連続性

 

野村辰寿(以下、野村) 今までの作品を知らないと理解度が下がると言っていたけど、知らない人でも楽しめるものにする必要はあるので、前段や幕間でうまく『ようこそぼくです』をずっと作ってきたことを感じさせる方がいいでしょうね。

姫田 シリーズものの映画でも、はじめに「これまでのおさらい」が入ることがありますが、そういうのを入れべきかどうか考えています。

野村 『ようこそぼくです4』というナンバリングタイトル作品として、完成したら国内外のフィルムフェスティバルに出品するわけでしょ。そういったときに、この「4」がシリーズの中でどう位置づけかされるかは必要かもしれないけど、単独でも楽しめることは絶対に大事で、その方が作品は広がっていく感じがします。

姫田 今まではシリーズとしての見え方よりも、その中のそれぞれの曲が立っている感じだったので、今回は3曲がまとまった『ようこそぼくです4』になる様にしたいと思っています。この作品のあとも、いずれ「5」を作りたいと思っているんですが、「この人、まだまだこれを作るんだ」と思わせる作品にしたいですね。

野村 今までは単発のオムニバス作品だったけど、今回は1本を通して3つの作品を展開しようとしているのは理解できて、その感じはうまくハマると思います。そういう意味で、今までの姫田作品を見たことのない畠中さんの意見は大事ですね。

畠中実(以下、畠中) 僕は、それほどシリーズ内のつながりを意識しなくてもいいと思いました。オムニバス作品と言いましたけど、『ようこそぼくです』の「ぼく」というのは、自分自身のことですよね。

だとしたら、自分の気持ちとかパーソナルなものとしての「ぼく」は自ずと出てくる気がします。だから「ぼく」という主体が思ったこととの関連性などがあれば、無理に連続することを意識しなくてもいいんじゃないかという気がします。枠にはめるようなことはしないで、表現は進化していくものだという感覚を持った方がいい気がします。

『ようこそぼくです』というタイトルと、自分自身が作っていることさえあれば成立する作品だと思うので、そこで一歩進んだ作風が見えるといいですね。

野村 いつも自由にのびのびとやっているから、今回も振り切ってくれると思っています。今までは学生という立場で作っていたものから、作家として作品で食べていくという立場になりますね。そんな自分を見つめ直すからこそ『レッツコリツ』という曲があると思うので、アーティストとしての心情が、ある種の共感を生む内容になるといいですね。

 

『ようこそぼくです』シリーズの紹介映像

 

 

3年ぶりの新作制作に向けて

 

畠中 今までの作品を見ると、作風が全部違うんですね。すごいですね。今回の3本は、絵コンテを見た感じだと絵の様子が似ていると感じますね。

姫田 似ていますが、それぞれ質感は変えようと思っています。『レッツコリツ』はペン画にして、『ようこ、素朴です』はドローイングっぽい感じにしようと思っています。最後の『こそこそぼくです』はべちゃっとした絵の具な感じですね。基本的に全て手描きでやるつもりなんですけど、今までの作品と比べると絵のタッチの差が少ないかもしれないです。

畠中 絵コンテを見ると、描画のタッチが少しずつ変わっているのが面白かったです。2月の成果プレゼンテーションの時には、これら3本の作品は完成している予定なんですか?

姫田 間に合わないかもしれませんが、できればそうしたいです。

野村 アニメーションはつくるのに時間がかかるから、成果プレゼンテーションまでに完成できないケースもあるのですが、ぜひ完成させてほしいですね。

姫田 結局のところ、大学を卒業してから3年の間、クライアントワーク以外では新作を作っていないんです。そういうこともあってこの機会に企画を応募しました。自分自身にプレッシャーをかけることで新作を作りきりたいです。

畠中 3年間もオリジナル作品がないとなると、そろそろ作りたいところですよね。今回の機会を利用して、ぜひ完成させてほしいです。

 
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― 9月の中間面談までにまずは『レッツコリツ』の制作を進めていくという姫田さん。次回は作品の途中経過の報告を予定しています。

 
 

次回は岩井澤健治さんの初回面談の様子をお伝えいたします。(8月13日(木)公開予定)

 

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