初回面談レポート:久保雄太郎

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。7月26日(火)と7月28日(木)と8月4日(木)の3日間に分けて面談の第1回目が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。
今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をこれからレポートして皆さんにお伝えしていきます。

 

第1回目は久保雄太郎さんです。

 

インクなどを用いた手描きの短編アニメーションを制作している久保雄太郎さん。『crazy for it』が第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品に選出、『石けり』が富川国際学生アニメーション映画祭2013オンライン最優秀賞受賞、『00:08』がアニマ・ムンディ2014ベストギャラリーフィルム受賞など数々の賞を受けています。今回採択された企画『Green』(仮)は、アニメーションの動きとその根底にある仕組み、法則(ルール付け)といった関係性に焦点を当てた新作アニメーションです。ある法則の中で展開していくノンナラティブ短編アニメーションで、音もアニメーションの構造に付随する法則・仕組みを構想中です。

久保さんのアドバイザーを担当するのは、アニメーション作家の野村辰寿氏とアートディレクター/映像ディレクターの田中秀幸氏です。

 

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ジョルジュ・シュヴィツゲベルに影響を受けた方法論の模索

 

― 初回面談は、改めて作品の構想の説明からスタートしました。
 
久保雄太郎(以下、久保) 大学院修了作品を制作をしている時に、スイスのアニメーション作家のジョルジュ・シュヴィツゲベルによるレクチャーがありました。自分の修了作品もある種の方法論を持ちながら制作していて、どういう構造だったらアニメーションにした時に面白くなるかという発想だったんですが、シュヴィツゲベルは画面をいかに面白くするかという方法論で、そこにある工夫がすごく面白かったんです。レクチャー終了後に本人と話をする機会もあり、修了作品でも彼の方法論を一部引用する作品を作りました。

自分自身の問題点は、アニメーションを学んだ上でアニメーション作品を制作しているので既視感があるとよく言われることです。ただ、問題だと思っている反面で、広い意味でアニメーション史から学んだ上で、自身の表現に落とし込んでいるということなので不名誉なことではないとも思っています。とはいえ、誰も見たことがないような作品を作りあげたい気持ちはあります。

あまり難しいことをするつもりはなく、今回の作品では画面の中でどう見えるかを意識しながら、四角形が形状を変えながら動くアニメーションを制作しようと思っています。最初に四角形が変形していく中で、画面全体を見たときに四角形の構造があることをそれほど意識させずに画面を作っていこうと思っています。現段階としては、その構造の制作を進めていますが、それほど進んでいません。応募時からの変更点としては、音楽を上水樽力(うえみずたる ちから)さんにお願いしようと思っています。今回の作品は、音楽との親和性がとても重要になります。

 

久保さんの修了作品『00:08』(2014)

 

法則、音楽、タイトルの関係性

 
野村辰寿(以下、野村) やることははっきりしているから、あとは作業をどうすすめていくかですよね。シュヴィツゲベルのメソッド(方法論)を受けて、その先にある久保メソッドにまで進化させた新機軸に挑戦できるといいかなと思います。

久保 作品を進める中で、もうひとつルールを作りたいと思っています。自分のその場の思いつきでなく、軸になるものがひとつ欲しいです。大学院修了作品では、主題である8秒の音楽があり、さらに8つの音がありました。音がどれだけ増えていくかに加え、自分の絵も増えていく。音楽の構造を絵の構造が同じにしました。そのように、今回も音楽と絡めたルールを上水樽さんと一緒に探っていきたいと思っています。

野村 音楽の形式もいろいろあるし、音楽的な構成から新たな突破口があるかもしれませんね。3D的な空間性にデジタル感のないディメンションをひとつ増やすことで、シュヴィツゲベルのメソッドをさらに先に推し進めることができるかもしれません。

久保 あと、もうひとつ悩んでいるのがタイトルです。いつもタイトルをつけるときは音の響きで決めることが多く、作品にルールがあることをタイトルで匂わせないようにしようと思っていましたが、逆に「○○ルール」と付けてしまうか、今回はどちらかにしようかと悩んでいます。F1のルールで「107パーセントルール」(*1)というのがあって、それは自分の作品に関係があるわけではないのですが音の響きとしてすごくいいなと思っていて。そういうルールが表に出てもいいかなと思うのですが、どうでしょうか?

*1 107%ルール……F1の予選において、ポールポジションのドライバーの周回タイムの107%以内を記録できないドライバーは、決勝レースの出場権が無効となるルール

田中秀幸(以下、田中) アニメーションの構造を全面に出した作品にしたいのか、もしくはそれはあくまで構造でしかなくて、他の伝えたいことがメインなのかで変わると思います。もともとは構造やルールを表に出したくないということだったということですが、曖昧になっているよりは、法則が面白くなったらそれを全面に出してもいいと思います。ショートアニメ―ションですし、伝えることははっきりしておいた方がいいですよね。

野村 そういう意味で前作の『00:08』はとてもわかりやすいし、作品そのものを言っているタイトルだよね。今回はそもそもなぜ『Green』(仮)なの?

久保 『Green』(仮)は、実はシュヴィツゲベルが映画祭でよくグリーンのジャケットを着ていることに由来しています。この作品は、グリーンに対しての思いからはじまっているので。

野村 なるほど、ネタとしては面白いですね。ただ、どれだけシュヴィツゲベルを意識するか、それを匂わすかということは見ている人には関係ないですよね。作品自体を言い当てるタイトルがあったらそっちの方がベターかなと思います。

田中 ルールや法則にこだわってやっているのであれば、それが全面に出てきた方が作品としてはいいですね。実験的な雰囲気が全面に出ていた方が、作品として強くなるし伝わると思います。あとは、音楽との関係性をどうするかは先に考えておいた方がいいですね。音と構造がどうやって深く関わっていくのかというのが今聞いただけだと不確定の部分もあるので、その辺をはっきりさせてから上水樽さんとの打ち合わせにも臨んだ方がいいと思います。

 
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本企画のイメージボードの説明をする久保さん

 

より印象を強くするために

 

久保 企画書の中のイメージボードは、画面の中で四角形それぞれが動いているようにするか、もしくは四角形で区切ってはいるけれど一枚の画面として見れるようするか、まだはっきり決まっていないんです。そこを早く決めたいと思っています。

田中 どちらが不思議な効果があるかはテストしないとわからないですよね。

野村 全編が同じというよりは、何かのきっかけで展開してもいいかもしれないですね。

久保 それに関してもうひとつ、モチーフは完全に絞った方がいいのかも悩んでいます。毎回、納得できるイメージボードが描けたら、欲張って色々な要素を詰め込んでしまうんです。

野村 ごった煮的な感じになってしまうから絞った方がいいですよね。例えば、あるカラーのモチーフがぐるっと裏返るとモノクロになったりすることでディメンションを一個増やせるじゃないですか。白黒パートとカラーパートの音のテンポを変えたり、そのあたりにも構成のヒントがあるかもしれないですよね。After Effectsの3Dエフェクトで簡単にできることだけど、アナログでやれば奥行きが出てきます。

田中 デジタルじゃなければ面白くなりますよね。厳選したワンアイデアをタイトルと合わせる方が作品として強くなります。こういうショートアニメで手法をテーマにした作品だったらはっきりさせた方が絶対強い。また、そういう作品が溜まってきたらそれを統合して長編を作ることもできる。今回は実験的なショートアニメにして感心されることを目指す方が良くなると思います。

久保 はい。これから音楽とアニメーションの関係性を決めて、四角形の部分をいくつか作って進められる段階にしたいと思います。本日のアドバイスもいくつか試してみます。下書きの段階で動いているものも作りたい。考えると作業が止まってしまうので、まず作業を進めたいと思います。

 
 

― 9月下旬に行われる次回の面談までに、音楽担当との打ち合わせなどを経て全体像をより具体化させていきます。

 

 

次回は林俊作さんの初回面談の様子をお伝えします。(8月11日(木)公開予定)

 

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