初回面談レポート:金箱淳一・石上理彩子

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。7月26日(火)と7月28日(木)と8月4日(木)の3日間に分けて面談の第1回目が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。
今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をこれからレポートして皆さんにお伝えしていきます。

 

第5回目は金箱淳一さんと石上理彩子さんです。

 

第11回文化庁メディア芸術祭にて『Mountain Guitar』がエンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出された金箱淳一さん。今回選出された企画『楽器を纏(まと)う』は石上理彩子さんとの共同プロジェクトです。人間と楽器との関係性を見直すことに焦点を当て、衣服に楽器の機能をもたせることで、楽器と人間との距離を限りなくゼロに近づけ、服のデザインと楽器の機能を相互に考えながら実用に耐える楽器の制作を行います。
金箱さんと石上さんのアドバイザーを担当するのは、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授/日本デジタルゲーム学会副会長の遠藤雅伸氏と、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員の畠中実氏です。
 
 
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衣服に楽器の機能を持たせるために

 
 
金箱淳一(以下、金箱) 今回の作品は、3つの展開方法によるプロジェクトを考えています。一つ目は、楽器を纏った演者が踊るように演奏するというパフォーマンス。二つ目は、作品がどういう原理になっているのかを観客が触りながら体験するインタラクティブな展示。三つ目は、それを着て身体の動きと演奏行為について考えるためのワークショップです。実現の方法は、タッチセンサーが搭載されたタッチボードと導電性の塗料をシルクスクリーンで印刷した衣服によるものです。タッチセンサーの試作が容易にできるほか、量産技術であるシルクスクリーンを用いることにより、将来的には市販できるような展開も考えたいと思っています。

次に、プロジェクトの進捗状況についてご説明します。
ハードウェア面については、導電性塗料の素材変更とタッチセンシングのテストを継続して行っています。パフォーマンスを前提とした時、制御基板も纏って動くことを考えるとしっかりと固定する必要があるので、基板と布が密着するような固定方法を検討しています。導電性塗料については、水性塗料で検討していたのですが、激しく動く布の変化に追従できない可能性が出てきました。東京大学工学系研究科電気系工学専攻の染谷研究室が開発したという導電性インクが、他の塗料と比べて導電性と耐久性ともに優れているようですので、このようなひずみに強い導電性の塗料の導入を検討しています。

ソフトウェア面については、センシングデータの無線送信プログラムの作成しています。当初の予定では、音声情報をBluetoothで送信することを検討していましたが、音に関するエフェクトをリアルタイムでかけるということを考え、タッチセンサーの値のみをPCに無線送信して、「Max MSP」内で処理をし音響信号を生成する方式に変えようと思っています。

企画としては、実際にパフォーマンスをしていただく筑波大学ダンス部員へプロジェクトの説明を行いました。そして、演奏する楽曲や演奏することの考え方を広げています。厳密な演奏行為をダンサーに要求するとダンスの動きが制限されてしまう恐れがあるので、背景となるメインの楽曲を用意して、演奏する音はそれに対する上音のようにしようと思っています。具体的には環境音の生成・再生をタッチセンサーによるボタンのコントロールで行ったり、蛇腹型のデザインのものは、蛇腹部分を開閉することでずっと流れる定常音の高低をコントロールできるコントローラーとして考えています。
 
 
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“楽器”をどう捉えるか

 
遠藤雅伸(以下、遠藤) まず気になるのは、楽器をどう捉えているかということですね。ダンスの方で曲を演奏するのが難しいとなると、演奏形態としてインプロビゼーションのような手法を取り入れるべきだと思っています。

畠中実(以下、畠中) 僕も音楽とダンスと、その中での楽器と言ったときにどういうものをイメージしているのかがよくわかりませんでした。話を聞く限りでは、楽器というよりはインターフェースを作っている感じがします。楽器とは言わなくても新しい制御の方法だということですよね。例えば、ローリー・アンダーソンのドラムマシンのパッドを服に縫い付けて、身体を叩くとパッドが叩かれる作品のような感じです。

金箱 それはボディパーカッションの延長みたいなことですか?

遠藤 リズム系であればその方がわかりやすいですよね。蛇腹型のものは、人によって音質が違えば結構面白いと思います。一緒にやっていると合奏しているように見えるし、やりあいしているような感じも演出できる。踊りと音との融合性も見えるし、毎回微妙にずれるであろうところもまた味ですよね。

畠中 それこそダンスでいうと、マース・カニンガムのパフォーマンスは参考になると思います。ジョン・ケージとのコラボレーションではテルミンのようなものが会場に何本か立っていて、ダンサーが踊ると音が鳴る。完全に制御しているというよりは、ダンスをやっている人はただダンスをしているのだけれども、音が鳴ることによってダンス自体も変わってくるという相互作用が起きるというものです。コントロールしていないということを入れ込むと、ダンスも音楽も両方並行して即興的な要素が増えてきて面白いのではないかと思いました。

遠藤 意図した踊りとしての振り付けではなく、演奏するという行為がそのまま振り付けになっているという状況ですね。

畠中 今はインターフェースを作る方に注力していると思うんですけど、どちらかというとパフォーマンスの最終形をどうしたらいいかというイメージを持ちながら作っていった方がいいと思います。

 
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楽器の機能を持った衣装を着て踊ることの意味

 
金箱 展示での展開例については、ただマネキンに服を着せるだけというのもどうかなと思っています。

遠藤 実際に観客に着てもらえるものがいいですよね。その為には着脱できるものがいいと思います。

畠中 なぜ着るのかということを考える必要があると思います。その服を着て踊るということがダンスのプラスの要素になっていると、演奏することへの意識が出ていますし、自ずと振り付けする人たちも考えないといけませんよね。

石上理彩子 ビジュアルとしても楽しいデザインにできればと考えています。例えば、耳が聞こえない人にとっても、視覚的に楽しめるようなデザインにしたいと思います。

畠中 デザインに関して、アコーディオンの蛇腹をヒントにしてこのような衣装の形になっているというアナロジーが面白いと思っています。

金箱 できれば、このようなメタファーみたいなものを服のデザインに取り入れたいなと思っています。デザインにも楽器のわかりやすさを出していきたいと思います。そして、その演奏行為が照明などとも連動するというのが考えられるので、舞台としての演出をどこまで広げて考えるかという話にもなってくると思います。

遠藤 せっかくなら、踊っている側のきっかけで起動して、コントロールされていく方が面白いと思います。

金箱 演奏者が舞台を司るようなイメージですよね。全体のイメージも含めて考えたいと思います。

 
 

― アドバイスをもとに、次回の中間面談までに衣装のデザイン制作や、パフォーマンスの構成などを進めていきます。

 
 

次回は平川紀道さんの初回面談の様子をお伝えします。(9月8日(木)公開予定)

 

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