最終面談レポート:金箱淳一・石上理彩子

2016年12月10日(土)、12月12日(月)の2日間に分けて、6組のクリエイターと担当アドバイザーとの最終面談が実施されました。その様子をレポートにてお伝えしていきます。

 
第5回目は金箱淳一さんと石上理彩子さんです。

 
初回面談の様子はこちら。
中間面談の様子はこちら。

 
第11回文化庁メディア芸術祭にて『Mountain Guitar』がエンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出された金箱淳一さん。今回選出された企画『楽器を纏(まと)う』は石上理彩子さんとの共同プロジェクトです。人間と楽器との関係性を見直すことに焦点を当て、衣服に楽器の機能をもたせることで、楽器と人間との距離を限りなくゼロに近づけ、服のデザインと楽器の機能を相互に考えながら実用に耐える楽器の制作を行います。

金箱さんと石上さんのアドバイザーを担当するのは、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授/日本デジタルゲーム学会副会長の遠藤雅伸氏と、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員の畠中実氏です。
 
 

最初の発表はCES

 
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デモンストレーションの様子:模様の部分をタッチすると音が奏でられる

 
-今回は、デモを見ながらの進捗の発表からスタートしました。

 
金箱淳一(以下、金箱) 各方面の進捗を報告します。まずハードウェア面ですが、ダンサーが装着するということで、生地、素材の伸縮に対応できる印刷加工というのが当初からの課題でしたが、東京大学の研究室と協力して印刷されたものが出来あがってきています。デモに使っている生地はこの印刷に相性が良いとされているものですが、かなり伸び縮みをします。印刷することは我々でもできるのですが、インクの乾燥工程で有毒ガスが出てしまうので、その工程においては東京大学の協力が必要です。いまは印刷も乾燥も東京大学でやっていただいていますが、もしかしたらシルクスクリーンの工程はこちらでやって、乾燥の工程をお願いするなどの方法の方が、クオリティが高くなるかもしれません。ソフトウェア面については前回とあまり変化はないのですが、実際に楽曲に取り組む上でどうしていったらいいのかを考えています。

テキスタイルのデザインもアップデートがありました。まず、東京大学から1月に開催されるCES(*1)に出展してみないかという打診がありました。そうすると、この作品の最初の発表の場がCESになるので、一着を先行する形で縫製作業等を進めています。実際には完成されたものをトルソーで飾り、来場者が触ることで音が奏でられる体験方法を考えています。商業用のイベントなので、最初に理想としていた「この作品をどのように一般的な商品や社会に実装していくか」という面のコメントを得られるかもしれません。

*1 CES……セス(コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの略)。毎年1月にアメリカで開催される家電・情報・通信・エレクトロニクス分野の世界最大規模のイベント

生地がよく伸びるので、動きの中心となる体幹に近い位置に制御基板を配置し、デザインも中央に集約するなどの工夫をしています。安定性の面では少し難があるので、ベースボードを設け、その上に基板を設置する二重の構造にしようと考えているほか、配線がフィックスした後に接続部をUVレジンなどで固めて安定性を高めるということもできると思います。

石上理彩子(以下、石上) 服のデザインについては、ドレープを実現しつつ、どのようにセンサーに組み込めるかを検討しています。サンプルとして、ゴム式センサーを持ってきました。カーボンを練り込んでいるゴムなので、伸ばすと抵抗値が上がるというシンプルな作りのものです。

振り付けのほうは、中間面談の後すぐに筑波大学に行って、ダンサーに試作を体験してもらいました。デモを見ていただき、企画の趣旨などの説明をしたのですが、センサーを使った演奏に非常に興味も持ってくれました。
 
 
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蛇腹のデザインのスケッチとサンプル素材

 
 

楽曲の構成

 
金箱 イメージしている楽曲のサンプルを持ってきました。全体的なパフォーマンスは、ファッションショーのランウェイをイメージしています。なるべくファッションショーに則ったようなパフォーマンスの仕方を考えた結果、奥からひとりずつ人が出てきてどんどん音が重厚になっていく、というものをイメージしました。基本的にはループの音が続くのですが、4着の楽器それぞれが別の音を奏でるので、どんどん人が追加されることで徐々に音が増えていき、重なっていくようなイメージです。イントロの部分にはミシンの生音が入っているのですが、このようになるべく制作に関連している音をうまく抽出して使っていこうと考えています。印刷したものに対して音を割り当てるボタン数は12チャンネルまで可能なのですが、あまりボタン数が多すぎてもなにをやっているかわからないと思うので、メインリフは4つの音で構成しようと思っています。
 

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遠藤雅伸(以下、遠藤) おもしろいですね。

畠中実(以下、畠中) (デモに使われたサンプルを触ってみて)叩くとパッド感がありますよね。切れる音だけではなく伸びている音のバリエーションもあるんですね。

金箱 はい。音の変化について、蛇腹部分においては伸縮によって抵抗値が変化するのですが、センサーの反応としては10段階程度の細かさでとることができます。変化の度合いとして、最大5段階くらいまでとれれば演奏のバリエーションが出てくると思うので、5段階くらいに追従できればいいと思っています。

遠藤 パフォーマンスの途中で音が変わってもいいんじゃないでしょうか。

金箱 はい。展開によって、例えば曲の前半と後半で楽曲の雰囲気を変えつつ、音色も変えるということはできます。

遠藤 ポルタメントのような感じがあるとテルミンみたいな印象になりますね。それだとイメージとしてはわかりやすいです。

金箱 そうですね。上音の種類も、パターンの違うものをその場で入れ替えることもできます。ポルタメントだとかなり多様性がでるので、飛び道具的な使い方になるかもしれませんが、そういうシーンがあってもいいのかなと思いました。

畠中 曲調を変えるというのはやったほうがいいと思います。音楽のタイプ自体が変わって、いろいろな音楽ができるという汎用性が見えたほうがいいと思います。

金箱 楽器としての幅を見せられるパフォーマンスを少し考えてみます。

 
 
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完成に向けて

 

金箱 これからCESに向けて作業を進めていき、システムを筑波大学に渡すのが2月上旬頃を予定しています。ダンサーのみなさんにはシステムを動かして実際に振り付けを練り込んでもらいたいと思っています。音楽的にも破綻がないように進めているので、実際にどのような演奏表現ができるのかを一緒に作っていくというイメージです。

服のデザインに楽器という機能を組み合わせたことで、例えば演奏しているうちに身体が元気になるような医療分野の服など、人の皮膚に近い服だからこそ考えられるような新しいインターフェイスになりえるのではないかと想像を広げています。楽器というのはひとつの機能だと思っています。例えば別の機能と組み合わせたときには「ここを押してほしい」というアフォーダンスとして機能するかもしれないし、そういうことを考えるすごくいい機会になっています。

石上 これがもっと簡単にできて精度が上がれば、踊るだけではないパフォーマンスの可能性が広がり、エンターテインメントでかなり使えるものになっていくんじゃないかと思います。演劇でも使えるものになると思います。

金箱 演劇の世界でも、「このタイミングでこの音が欲しい」という役者の要望にも対応できるという可能性があるのかなと考えています。今回の発表を機にいろいろな人とコラボレーションすることができるといいなと思います。

畠中 音のでる服の前例はいろいろあるから多くの使い道が考えられると思うのですが、パフォーマンスとして考えたときにはシステム自体を考え直すこともできるかもしれませんね。パフォーマンスはファッションショーのようなイメージと言っていましたが、ダンサーの人数は4人くらいなのですか?

金箱 本当はもう少し増やしたいのですが、ひとつひとつの個別の音に注目すると考えると、誰がどの音であるということを聞き分けられるのも重要な要素だと思います。当初はオーケストラのような構想も持っていましたが、誰がどの音なのかわからなくなってしまうので、因果関係をはっきりさせるためにもはじめは4人くらいがいいと考えています。

畠中 曲と演奏の仕方がある程度決まっているということは、そこから「叩くこと」と「どういう振りにするか」ということを考えてダンスにしていくということですよね。

遠藤 問題は、動作中にその要素を組み込みながらいかに身体表現をするかというところですね。

金箱 ダンサーに難題を投げることになると思います。四肢があるので、演奏時の身体の形はダンサーに一番期待している部分です。ただ演奏するだけではなく、踊りの部分で表現を拡張したいと期待しています。

 
 
― 3月4日に開催される成果プレゼンテーションではファッションショー形式のパフォーマンスも実演される予定です。

 
 
次回は安本匡佑さんの最終面談の様子をお伝えします。(3月2日(木)公開予定)

 

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