初回面談レポート:スズキユウリスタジオ

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。9月13日(木)と9月14日(金)の2日間に分けて初回面談が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。
今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をこれからレポートして皆さんにお伝えしていきます。

 
第1回目はスズキユウリスタジオ代表のスズキユウリさんです。
 
スズキユウリさんは、ロンドンを拠点に世界中で作品を発表するほか、文化庁メディア芸術祭では『The Global Synthesizer Project』が第20回アート部門審査委員会推薦作品に選出されるなど、国内外で活躍されています。今回採択された企画 「エレクトロニウムプロジェクト」(仮)は、米国の作曲家レイモンド・スコット氏(1908-1994)が手掛けていた未完成の自動作曲装置「エレクトロニウム」をソフトウェア上で再現し、多くの人が人工知能との対話などを楽しめるプラットフォームを構築するものです。
アドバイザーを担当するのは、アーティスト/多摩美術大学教授の久保田晃弘氏と、ソニー株式会社勝本常務室(R&D担当)UX企画部コンテンツ開発課統括課長の戸村朝子氏です。

 
-初回面談は、ロサンゼルスからSkypeを介して行われました。
 

 

リサーチで明らかになってきた「エレクトロニウム」の実体

スズキユウリ(以下、スズキ): 現在ロサンゼルスに滞在し、リサーチを行なっています。先週は、レイモンド・スコット氏に関するシンポジウムに参加し情報収集しました。また別の日には音楽家のマーク・マザーズボー氏(1950-)を訪ね、実際にレイモンド・スコット氏が制作をしていた「エレクトロニウム」の実物を見せてもらいながら、ちょっとしたインタビューをしたり、写真資料を集めたりしました。そのほか現地の関係者に話を聞きながら、少しずつ詰めているところです。また、最終的にどういう形にするか、予算も踏まえて探っています。

久保田晃弘(以下、久保田): 僕らも一緒に考えながらサポートしたいと思うので、「エレクトロニウム」に関する資料を可能な範囲で共有してもらえればと思っています。現在は、どのような情報が集まっているでしょうか。

スズキ: 今回、有意義だったのが、「エレクトロニウム」についてエンジニアに直接話を聞けたことです。また、レイモンド・スコット氏のメモを書籍化したものも入手できました。こうしたリサーチを経て「エレクトロニウム」にどのような機能が実装される予定であったのかが掴めてきました。探っていく中で、実はどうやら自動生成する機能が全くなかったらしいということがわかってきたんです。「エレクトロニウム」は音楽を自動生成できるという触れ込みだったのですが、当時の技術的に間に合わなかったようです。その上で今後、どういう要素を作品に入れるかが重要になると感じています。正確に「エレクトロニウム」の再現をするのではなく、どういう「物語」や「機能」を提案するかということに焦点を当てて考えていく予定です。

久保田: 僕もそこは非常に重要なところだと思います。アーカイブや復元だけではなく、当時は実装できなかったことや、さらにレイモンド・スコット氏がきっとこういうことをやりたかったに違いない、というところまで拡張することなど、根拠を示した上でどんどんやるべきだと思います。

スズキ: はい。機械がどういうものだったか、どうあるべきだったかが分かってきたので、今後は、レイモンド・スコット氏の研究家などと話をしつつ「物語」や「機能」をつくっていきたいと思っています。そこへ人工知能の要素を加えていくことが、このプロジェクトを仕上げることに繋がるのかなと思います。

久保田: ええ、積極的に考えてもらって、「これは『エレクトロニウム』にインスパイアされた“僕の作品”です」と言えるくらいのところまで目指してください。

戸村朝子(以下、戸村): そうですね、何をどうやっても、もう厳密にはレイモンド・スコット氏の作品にはならないので。レイモンド・スコット氏へのある種のオマージュにもなり得るかもしれませんが、立ち位置をはっきりさせて、スズキさんなりの解釈を見せてほしいと思います。リサーチされたことや、それに対する研究家の反応など、そのプロセスも含めて作品となるのだろうなと思います。

 

 

作品の影響と、そこから広がる可能性

 
戸村: また今回、さまざまな方面への影響力も含めて楽しみにしています。レイモンド・スコット氏のコミュニティを、直接知らない人にまで想定して広げることもできると、作品に加えてムーブメントのようなものがつくれるのではないでしょうか。実績のあるアーティストをアドバイザーに迎えるやり方もあるでしょうし、例えば音楽の現場にいる人たちを巻き込んで、“僕のレイモンド・スコット”が続いていくような出来事のきっかけになれば、と期待しています。

スズキ: 確かに、アーティストやミュージシャンを巻き込むことは大切だと思います。レイモンド・スコット氏に影響された方々がたくさんいらっしゃるので。そういう人たちの音楽を、例えば機械に覚えさせて、それをベースに作曲できるといいなあと考えています。
また、今回のロサンゼルス滞在でのもう一つの収穫は、レイモンド・スコット氏のご子息と話ができたことです。レイモンド・スコット氏のことをたくさんの人に知ってもらいたいという思いがあり、このプロジェクトにもとても協力的でした。そのためにも、できればウェブ上で展開したいと思っています。

 

 

技術面を具体的に進めていく

 
久保田: まずは、この方向で制作を進めていってもらえればと思います。

スズキ: ロンドンに戻り次第、内容を確定し、人工知能や機械学習などの技術面についてコラボレーターと相談したいと思います。
今後の予定としては、今年中にソフトウェアも含めてある程度は完結させたいと思います。その後、2019年6月にバービカン・センター(ロンドン)で開催される展覧会への出展を予定しており、展示方法なども来年3月までには考えたいです。また、今回参加したレイモンド・スコット氏のシンポジウムは、来年度も開催予定とのことなので、その場で今回のプロジェクトを紹介できるように準備を進めていきます。

久保田: 了解しました。協力してくれるメンバーの紹介などの面でも、サポートしていきたいと思っていますので、また進捗状況を共有してください。

スズキ: はい。制作チームの人選なども相談させていただけたら、と思います。

 

─次回の面談までに、ロサンゼルスでのリサーチを踏まえた企画の再検討などが行われる予定です。

 

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