中間面談レポート:佐々木遊太

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。11月29日(木)に中間面談が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をレポートしてお伝えします。

 
第4回目は佐々木遊太さんです。
初回面談の様子はこちら
 
特定の知識を要する鑑賞状況のみで成立するような表現ではなく、多様な人々に開かれた表現メディアの創出を目指して作品制作をしている佐々木遊太さん。今回採択された企画は、自身も尊敬する日本のお笑い芸人「ダチョウ倶楽部」の代表的な芸、通称「どうぞどうぞ」を、構造の理論化とそれに基づく制作とのフィードバックを繰り返しリサーチするアートプロジェクトです。佐々木さんが制作テーマとする、狭義のメディア表現の分野のみならず多くの方々に受容される「鑑賞者の知識や背景を問わないおかしみ」を創出するための知見を蓄積することを目的としています。
佐々木さんのアドバイザーを担当するのは、アーティスト/多摩美術大学教授の久保田晃弘氏と、マンガ家/神戸芸術工科大学教授のしりあがり寿氏です。

 

 

個性を感じさせる実装

 
─資料を見ながら、これまでの進捗状況を報告します。
 
佐々木遊太(以下、佐々木): 前回の面談でのアドバイスから、実装の要件を再定義しました。ひとつは、作品を「笑い」に落とし込まず、受け取り方は鑑賞者に任せるということ。そして久保田さんが挙げられていた、郡司ペギオ幸夫氏(理学者、1959-)の著書『群れは意識をもつ』も読み、郡司さんと僕の、ダチョウ倶楽部の扱い方の違いを感じました。郡司さんは、彼らを汎用性のあるモデルケースとして提示していますが、僕はあの3人の個性があってこその魅力を感じ、それを実装でも表したいと思っています。そこで今は、各々の「個性」も意識しながら実装を進めています。
具体的に、前回もお見せした、「どうぞどうぞ」のプロセスを表した関数に、僕が普段の生活の中で気になった主語と述語を落とし込み、主語となる者同士が、述語を「どうぞどうぞ」し合うことが繰り返される映像作品です。
ダチョウ倶楽部のお三方の体型やバランスも、その魅力を司る要素の一つだと感じていて、3体の体型を別々にしました。今回は、「どじょうすくいの踊り手」「マーモセット(サルの一種)」「木彫りの熊」という3つの主語をモチーフに、擬人化した3体をモデリングしました。

─3DCGでモデリングした3体が動く映像が流れます。

佐々木: 彼らの動きには、僕の動作をKinect(ジェスチャーや音声認識によって操作ができるデバイス)でモーションキャプチャしたデータをあてています。今お見せした映像は第三者視点で全員を捉えたものですが、3体のいずれかの視界をVR空間内で体験できる実装もおこないました。
次に考えたのは、『牛を吸うUFO』です。これはいわゆる「エイリアン・アブダクション(宇宙人に誘拐されること)」をモチーフに再考したものになります。3DプリンターでUFOと牛を出力し、テグス糸を伝って牛が上下する仕組みをつくりました。これを3セット並べ、それぞれのUFOが牛を吸ったり降ろしたりする動きに「どうぞどうぞ」を実装します。
各々の個性は吸う速度や、UFOの光り方、展示台に芝を貼ったり、底からの送風の具合でも演出できると考えています。
そして、前回やりたいと話していた、目に映る万物全てを「どうぞどうぞ」にする『どうぞどうぞ無双(むそう)』ですが、AppleScript(アップルが開発したオブジェクト指向のスクリプト言語で、MacOSや市販のソフトウェアに対し直接命令をし、自動で意図した処理を行ってくれる言語)を利用すれば、コンピュータのデスクトップ上でさまざまなアプリケーションが起動と終了を繰り返すことができると気が付きました。
アプリの種類によってはハイコンテクストな楽しみ方が生まれるのですが、より一般的になじみのあるアプリも盛り込んで、いろんな人が楽しめるようなものにしたいと思っています。
『どうぞどうぞ無双』の実装アイテムとしてもう一つ、AWS DeepLens(深層学習に対応した開発者向けビデオカメラ)に目をつけていたのですが、サーバへの問い合わせにまつわることなどがネックで、活用は難しそうです。

久保田晃弘(以下、久保田): 「どうぞどうぞ記録カメラ」のようなものをイメージしているのであれば、AWS DeepLensよりも、Google AIYビジョンキット(モノを認識できるAIカメラの自作キット)を使う方がいいかもしれませんね? キットなので改造もしやすいですし、中にRaspberry Pi(電源やSDカードストレージを装着することで使用できる「ワンボードマイコン」と呼ばれるハードウェア)が入っているので、ローカルで動きます。現状で1000種類のモノを判別してくれるので、モノを認識させるだけならこれで十分かもしれません。
もう1つ、僕が最近買ったGoogle Clipsというカメラ、これも面白いかもしれません。撮ったものを判別するのではなく、つまりは僕じゃなくてカメラが面白いと思ったものを学習し、勝手に撮ってくれるようになります。

しりあがり寿(以下、しりあがり): 撮影もしてくれるとは……すごいですね。

佐々木: Google AIYビジョンキット、使えそうです。Google Clipsも面白いですね。使い方として、2パターン考えられると思います。カメラが風景の中にオブジェクトを3つ検出すると撮影し、自動的にそれらに「どうぞどうぞ」の関数が適用されて動き出すというものが1つ。あるいは、カメラの視界に入ってくるものが「どうぞどうぞ」かどうかを判別するシステムを構築する。どちらも無双感があります。入手して試してみたいと思います。

しりあがり寿: ややこしいこと考えずに、そのカメラでダチョウ倶楽部ばかり撮っていれば、似たものを撮ってくれるようになるのでは?

一同: (笑)

佐々木: おっしゃる通りです!

 

 

個展に向けての計画

 
佐々木: 2月中旬に東京の3331 Arts Chiyoda、2月下旬から3月上旬にかけて京都のy gionで個展を開催します。
個展では、自分自身とコンピュータとの共同パフォーマンスも行いたいと思っています。過去に制作した『即席紙芝居』という作品でも、ある程度のハプニング性を仕込んだWEBアプリケーションに即興で語りをつけるというパフォーマンスを行いました。人間とコンピュータとの距離感は、以前から制作テーマの一つになっています。
そして、個展会場を下見した際に感じた物足りなさから、「扁額(へんがく)」(神社や寺院などに掲げられた、文字が書かれた横長の板)をつくることにしました。扁額の謂れはさまざまですが、その昔、朝廷から正式に認められた寺院に与えられたものという話も聞き、自分で自分に与える「お墨付き」という意味で展示します。

扁額を含め、計14点を展示予定です。ロケット発射のモンタージュ映像からはじまり、そこから『どうぞどうぞ無双』までの思考の推移を体感できるような配置にしたいと考えています。作品のほかに、作品の相関図と制作記を載せたペーパーを配布するつもりです。展示に加えて、毎晩のプレゼンテーション、科学コミュニケーターをゲストに迎えたトークイベントも行います。
ウェブサイトは年明けには公開し、GitHubでこれまで制作した素材を公開します。3Dデータなども、誰にでも好きに使ってもらえたらと思っています。

 

 

普遍性の在り方、評価軸との付き合い方

 
久保田: 郡司さんとの違いの話ですが、おっしゃる通り、学者である郡司さんが普遍性を目指しているのに対し、佐々木さんの場合は、独自性を突き詰めることで、その副産物として普遍性が生じてしまう、というところが違いだと思います。佐々木さんの強みは、何をやっても全て佐々木訛りになって出てくることです。そういう人にとっての普遍性は、自分に正直に作り続けた先にあるものです。科学コミュニケーターとのトークイベントでそういったスタンスの違いなどを話してみると面白いと思います。通常、学術研究の中に個人の感情や俗人的なことが入ってはいけないとされていますが、実はそこが一番の障壁であり盲点なのかもしれない。佐々木さんのプロジェクトには、そういった問いかけができる可能性があります。

しりあがり: 研究というフォームを餌にしているようなところがありますよね。シェフみたいだなとも思います。面白い素材を見つけてきて、自分なりの調理法で調理して出す。こだわりのシェフのイメージです。

佐々木: 自分のやっていることが、どの評価軸に乗りうるのかがわからず悩んでいるのですが……。

久保田: 逆説的に言えば、カテゴリ分けできないということこそが大事です。分けられているもの、すでに名前が付いているものは、すでにあるもの、もう過去のものです。
既存の評価軸や分類のどこかに収めようとする必要なんてありません。逆にそのことをうまく利用して、自分の活動によって既存のフレームの在り方をどう変えられるか、それを楽しむようなスタンスでいいと思います。

 
─次回の最終面談では、個展・成果プレゼンテーションに向けての計画を発表します。

 

Authors

*


Top