最終面談レポート:最後の手段(有坂 亜由夢/おいた まい/コハタ レン)

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。1月30日(木)に最終面談が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をレポートしてお伝えします。

 
第2回目は最後の手段(有坂 亜由夢/おいた まい/コハタ レン)です。
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ミュージックビデオ『やけのはら「RELAXIN’」』が第17回文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門新人賞を受賞した映像作家チーム「最後の手段」。今回採択された企画は、静止画から生まれる空間や、動画から生まれる空気を融合させた、マンガと映像の中間のような作品です。ミクロとマクロ、現在と太古を行き来し、破壊と再生を繰り返しながら新しい世界へと向かうことをテーマに制作を行います。「最後の手段」のアドバイザーを担当するのは、マンガ家/神戸芸術工科大学教授のしりあがり寿氏と、アニメーション作家/東京造形大学准教授の和田敏克氏です。

最終面談ではこれまで同様「最後の手段」の代表、有坂亜由夢さんが出席しました。

 

 

表現の可能性を考える

 
─制作物を見ながら面談が進みました。
 
有坂亜由夢(以下、有坂): マンガの第1話を描き切りました。アドバイスを受けて状況が分かりやすくなるよう、細かな表現の調整を行いました。全体では8話分の予定で、ネームもだいたい完成しています。縦スクロールで読む想定です。第1話を自分のスマートフォンの画面でも見てみたところ、全体的にコマが単調になってしまったかなと感じ、重要なところはもっと大きく描くなど、今後さらに修正しながら進めていきたいと思います。
彩色のバランスは検討中です。白黒の方がまとまりやすいと感じるので、各話の画面転換でカラーから白黒にするなど、色の変化も効果的に使えれば、と思っています。
マンガの中の動画も試作しました。マンガとは別の作品として、動画をつくる可能性も模索しています。その動画を使って宣伝ができれば、動画からマンガへリンクさせることで、作品の世界観も広がるかもしれないと考えました。

和田敏克(以下、和田): 成果プレゼンテーションが行われる3月までには、どの辺りまで進める予定ですか?
 
有坂: できるところまでマンガを描き進める予定で、3話までは完成したいと思っています。。
できれば先ほどお話しした番外編動画も、つくりたいと思っています。今回のテーマである「生命力」や「湧き上がる感じの表現」に沿って、主人公の子供が成長していく瞬間などを切り取って、30秒程度でつくれたらと思います。

和田: 第3話まで進めるよりも、第1話に絞ってしっかりとした完成形を見せることに集中する方がいいかなと思いました。その方が第2話以降の制作にも役立つと思います。第1話が一旦完成した時点で、どうすればこの表現がさらにおもしろくなるか、実験してみてはいかがでしょうか。
ウェブサイト上で公開するとのことなので、紙媒体とは違う魅力について探れるといいですよね。例えば、ずっと続けてスクロールしていくのか、1ページごとにスクロールするのか。その中でコマは一つひとつ順番に出すのか、不規則に出すのか。というようにコマや動画の出し方を、時間軸を意識しながら工夫していくといいと思います。

 

 

コマと動画の関係を自由に捉えて

 

有坂: スマートフォンの画面でも見ていただいてよろしいでしょうか。思った以上に小さく感じるのですが。

和田: 画面にコマが1枚、ぽこっと出てくる瞬間があってもよさそうです。コマが小さいとごちゃごちゃして見えてしまいますね。

有坂: 確かにそうですね。

和田: 既存のマンガをスマートフォンで読んでいる人は、小さい画面でも読み慣れているのかもしれませんが、せっかくこのサイズでつくるのなら、もう少し突き詰めて考えてみてはいかがでしょうか。有坂さんのマンガは、描き込みの多さが魅力なので、それが生きるようになればいいなと思います。
映画的な考えですが、一コマを「寄り」「引き」で見せるのもいいしれません。登場人物の手や足などの部分にそれぞれ寄ってから、引いて全身を見せる、というような。そうしたら、画面の小ささも補えそうです。

しりあがり寿(以下、しりあがり): だんだんと作品の全体が見えてきましたね。僕も、第1話を完成させて形を定める方がいいと思います。
紙媒体の場合は、コマ割りを考えるときにスムーズに読めることを優先させるんです。その中に動画が入ってくるとしたら、読者のストレスになってしまうかもしれません。動きに気を取られて、物語の世界に入っていけない可能性があります。
ただ今回の企画では、実験的にでも動画を入れる方がいいと思います。ここでは読みやすさにこだわるよりも、新しいスタイルをつくることに踏み込むべきではないでしょうか。例えば、動きをコマの枠内に納めず、コマを横断したり、全体にかかったりするようなものもおもしろそうですね。作品全体動画みたいな感覚でつくってみてはいかがでしょうか。

有坂: 今のお話を聞いて、解放された思いです(笑)。私の作品は以前から見づらいと言われることが多かったので、人に飽きさせず見せる方法を考えなければと思っていましたが、自由に創作したいと感じました。

しりあがり: お話のつじつまを合わせるよりも、読者に何かしらの感情が残るような作品になればいいと思います。スピードや盛り上がり、テンポなどをコントロールして、音楽をつくるように進めるのもありだと思います。

有坂: 確かにおもしろいですね。ちょっと真面目すぎました。

しりあがり: いえ、鑑賞者のことを考えるのはプロセスとして大切なことです。

 

 

厳密なルールを設けず、感覚を優先して制作する

 
和田: 今、素材が揃ったということで、これからは、遊びというか、どんなおもしろいアイデアが出せるかを考えて進めて良いのではないでしょうか。
画面上では元々コマの概念も少ないので、割と自由に考えていいのかなとも思います。

有坂: はい、マンガにとらわれ過ぎずに制作します。勇気が出てきました。

和田: 色付けも、ルールを設けず有坂さんの感覚で進め、個々のシーンやページごとに、色があるといいなと思ったところに付けてみてはどうでしょう。
全体的に縛りごとをつくらないで、場面ごと、コマごとに見せ方の検討を重ねる方が、おもしろい作品になりそうです。例えば「スポッ」っていう言葉がどう出てくるのかを考えるだけでも色々なアイデアが出せそうです。「何ページに何回動かさなければいけない」というような決まりごとをつくると、かえっておもしろくなくなりそうです。

有坂: 普段の仕事ではアニメーション制作をやっているので、その延長で考えていければ、と思いました。実はこれまで苦手に感じていた「人に伝える力」を鍛えようと、自分の中のモードを変えてチャレンジしていましたが、変に意識せず自由に取り組みたいです。

しりあがり: 前回の中間面談までは、マンガとして飽きさせずに読ませる方法などを色々と話しながら探ってきました。今は成果プレゼンテーションに向けて、どこをゴールにして走るかを決める段階です。

有坂: 成果プレゼンテーションまでに第1話をしっかりつくりたいと思います。当日は、原画と動画も併せて発表する予定です。動画の方の原画かスケッチも展示できたら、と思います。

 
─成果プレゼンテーションに向けてさらにアイデアを出しながら表現方法を検討していきます。また、ウェブサイト上での公開を見据え、技術者との打ち合わせを進めます。

<開催概要>
成果プレゼンテーション「ENCOUNTERS」
URL: https://creatorikusei.jp/achv2019/
日時:2019年3月1日(金)〜3日(日)
会場:Ginza Sony Park B3F
出演トークイベント:3月3日(日) 16:30〜18:00
「AIと神話、現在の物語(ストーリー)の作り方」
アドバイザー:しりあがり寿、和田敏克
クリエイター:有坂亜由夢(最後の手段)、石橋友也+新倉健人、水江未来+土居伸彰(『水江西遊記(仮)』製作委員会)

 

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