最終面談レポート:佐々木遊太

メディア芸術クリエイター育成支援事業では、企画が採択されたクリエイターに対して制作費の支援をするだけでなく、その企画に対する質的な向上の支援を目指して、アドバイザーとのディスカッションを盛り込んだ面談を実施しています。1月30日(木)に最終面談が実施され、作品のコンセプトや、制作の上での技術的な課題、完成時の発表方法やその後のプランに至るまで、様々な視点から議論が交わされました。今年度採択された6組のクリエイターと、それぞれの担当となったアドバイザーとのやりとりの様子をレポートしてお伝えします。

 
第3回目は佐々木遊太さんです。
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特定の知識を要する鑑賞状況のみで成立するような表現ではなく、多様な人々に開かれた表現メディアの創出を目指して作品制作をしている佐々木遊太さん。今回採択された企画は、自身も尊敬する日本のお笑い芸人「ダチョウ倶楽部」の代表的な芸、通称「どうぞどうぞ」を、構造の理論化とそれに基づく制作とのフィードバックを繰り返しリサーチするアートプロジェクトです。佐々木さんが制作テーマとする、狭義のメディア表現の分野のみならず多くの方々に受容される「鑑賞者の知識や背景を問わないおかしみ」を創出するための知見を蓄積することを目的としています。
佐々木さんのアドバイザーを担当するのは、アーティスト/多摩美術大学教授の久保田晃弘氏と、マンガ家/神戸芸術工科大学教授のしりあがり寿氏です。

 

 

個性をどこまで重視するか

 

佐々木遊太(以下、佐々木): 3331 Arts Chiyodaでの個展「『どうぞどうぞ』をしらべる 外神田」の開催が間近のため、ウェブサイト(http://dozo-dozo.tech/)を公開しました。DMのメインビジュアルはプロジェクトの相関図です。プロジェクトの過剰さを伝えるため、宛名を書く余白を残しませんでした。
トークイベントについても話を進めています。東京と京都、どちらのゲストも科学コミュニケーターですが、このプロジェクトが研究といえるか否か、現時点ですでに各々の見解が違うため、面白いトークになりそうです。終了後には、打ち合わせ内容等も含めてレポートにまとめ、ウェブサイトにアップしたいと考えています。
では、各作品の実装状況についてご覧いただきます。表現のニュアンスなどについて、率直な感想や改良のアドバイスなどをいただければ、と思っています。

─『V-3 組み合わさったモデルと動き』『D-7 牛を吸うUFO』『A-1 どうぞどうぞ無双』の実装状況を動画等で報告しました。

佐々木: 『V-3 組み合わさったモデルと動き』で登場するモデルたちは、そのビジュアルに加え、各々に動き方も異なるため、かなり個性を感じられる実装になりました。
AppleScriptを用いた『A-1 どうぞどうぞ無双』については、1つ問題が生じました。「どうぞどうぞ」のタイミングでアプリケーションを2つ同時に閉じる必要があるのですが、それが難しいのです。あらかじめ用意したアニメーションに差し替えてしまうなど、対策を考えてはいるのですが。

久保田晃弘(以下、久保田): 『V-3 組み合わさったモデルと動き』は、モチーフがすべて前を向いているので、コミュニケーションの関係が見えにくい気がしました。実際の人間同士のやりとりを考えてみると、視線の動きが重要かもしれません。互いを意識していることがわかるような視線の動きを、動作の前に加えてみてはいかがでしょう。

しりあがり寿(以下、しりあがり):「個性」をテーマにそれを重要視する方向でこれまで進めて来ましたが、ちょっとそちらに気をとられすぎているような印象を受けました。3DCGでつくったモデルや、3機のUFOのビジュアルそれぞれに個性を持たせていますが、見ていると、肝心の「どうぞどうぞ」の動きや流れではなく、そちらに目がいってしまうかもしれません。加えてこれは感想ですが、実は「どうぞどうぞ」にとって一番重要なのは、終わりの見せ方なのかもしれないと感じました。「どうぞどうぞ」の後でぽつんと取り残される3人目が、宙ぶらりんなまま後に引けず行き場のない状況に陥る、その表現こそが重要な気がします。

佐々木: 視線の動きはキネクトでは掬えなかった部分なのですが、手作業で加えてみたいと思います。個性の表現に気をとられすぎている点は、自分でも感じていたところがあります。盛り込んだ要素をそぎ落としていく作業も必要だということですね。

しりあがり: 大学の授業で、学生に漫画のネタを考えさせるとき、描きたいものをまずは400字で書き、それを200字に、さらに最終的に50字にまで減らして書くということをさせます。すると、やりたいことがとてもシンプルで明確になります。佐々木さんも今一度そういった作業をすることで、たくさんある実装作品全てに通底させたいものをよりシンプルに捉え直すことができるかもしれません。

久保田: ここまでは、とにかく考えをかたちにしてみる作業だったと思いますが、展示に向けたプロセスの最終段階として、自ら作品を観る側に立ってみることが大切です。実際、個展会期中は他の誰よりも自分自身が会場に長くいて、作品を観続けることになります。作家自身がいつまでも飽きずに、面白がることができる作品になっているか。観るたびに新しい発見が得られるか。これらは重要な判断基準です。そのような視点で改めて作品を観て、あまりしっくりこないならば、それがどれだけ時間や手をかけた作品であっても展示はしない、という判断を下す。作家は「一生懸命つくったから出展しよう」と思ってしまいがちですが、そこはシビアにジャッジすべきです。

 

 

空間全体を「どうぞどうぞ」にする

 
佐々木: 展示の構成をどのように考えていくべきなのか、今日、アドバイスをいただきたいと思っていました。ご自身の展示のときはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

しりあがり: 僕の場合、まずは既存のものや過去に見た展示などからヒントを得ます。考えるうちにあえて違う方向に向かうことももちろんありますが、最初のとっかかりとしては、何かに寄せてみると具体的に想像しやすいと思います。

久保田: あとは、個々の作品だけではなく、全体として何かを表現しているような状態をつくることができると、個展という見せ方に説得力が増します。自分だけで空間を作れるわけですから。例えば「実は、個々の作品だけではなく、展示全体としても『どうぞどうぞ』になっているのです」と言えるような仕掛けを、空間全体に施すことはできないでしょうか。

佐々木: 初回の面談でも、空間全体で「どうぞどうぞ」を時折同期させるような、同様のアドバイスをいただきました。以前、部屋中の照明のON/OFFをコントロールする仕組みはつくりました。それに加えて、各実装の「どうぞどうぞ」のタイミングを一斉に同期させることができれば、空間全体での「どうぞどうぞ」は実現可能だと思います。

しりあがり: 実現すれば、かなりハッとする体験ができそうですね。それに、時間軸やタイミングという概念はこのプロジェクトにおいてとても重要な要素なので、空間全体でそれをコントロールすることには、意味があると思います。

久保田: 実際に会場でどのように感じるかは、体験してみないとご自身でもわからないと思います。会期中もパラメーターは変えられるようにしておくといいかもしれません。

 

 

「どうぞどうぞ」を一緒に練習する

 
佐々木: 前回もお話しした会場でのパフォーマンスですが、スマートカメラ自作キット「Google AIY Vision Kit」を用いて制作していました。ダチョウ倶楽部の実際の映像から、「俺がやるよ」と手を挙げるシーンをカメラに学習させていたのですが、映像を観るうちに、「どうぞどうぞ」と勧める際の手の動きの方が、より特徴的で美しいことに気がつきました。そこで、『どうぞどうぞの練習』と題して、来場者参加型のパフォーマンスを行いたいと考えています。参加者にカメラの前で「どうぞどうぞ」の動作をおこなってもらい、その動作がどの程度「どうぞどうぞ」であるか採点し、一緒に練習を重ねるというものです。
加えて、成果プレゼンテーションも参加型のパフォーマンスをメインに行いたいと考えています。「どうぞどうぞ」の練習とはまた別のパフォーマンスになりますが、お客さんから集めたライブフォト(*1)を素材に行う『どうぞどうぞ無双』を考えています。先日、友人が「これ使えない?」と、間欠泉(熱水や水蒸気を吹上げる温泉)のライブフォトを送ってくれたのですが、考えてみれば、何かしら動きのある素材であれば、以前導き出した関数を用いて「どうぞどうぞ」にできてしまうのです。プレゼンテーションの当日は、来場者から集めたライブフォトをその場で「どうぞどうぞ」に変換するパフォーマンスを、露天商のような雰囲気で行えるといいのではと考えています。

久保田: 個展には必ず伺います。楽しみにしていますので、ラストスパート、頑張ってください。

*1:iPhoneのカメラが持つ、写真を撮影する前後の動きやサウンドも一緒に保存することができる機能。

 
─成果プレゼンテーションと個展に向けて、実装の最終調整を進めます。

<開催概要>
成果プレゼンテーション「ENCOUNTERS」
URL: https://creatorikusei.jp/achv2019/
日時:2019年3月1日(金)〜3日(日)
会場:Ginza Sony Park B3F
出演トークイベント:3月3日(日) 13:00〜14:00
「現在におけるコミュニケーションと余白の表現」
アドバイザー:久保田晃弘、しりあがり寿
クリエイター:内田聖良、佐々木遊太

 

Authors

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